カラトリ芋

karatori01山形県庄内平野の伝承野菜「カラトリ芋」<写真>

出羽三山が連なり、母なる最上川が織りなす扇状地に広がる庄内平野。ゆったりとした時の流れる穀倉地帯で、伝承野菜であるカラトリ芋を作り続ける素敵なおばあちゃんに出会いました。

「本当は、芋なんて作りたくなかったんだけどぉ、先祖代々受け継がれてきたもんを絶やしたくない一心で母の後を継いだんだ。25人いた生産部会のメンバーがどんどん減って、最年少のわたしがもう70。あいてる土地はいっぱいあるけど、誰か入ってくれんかのぉ」と、カラトリ芋生産部会代表の池田千代子さん(70)。

 

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もみ殻くんたんの説明をする千代子さん<写真>

カラトリ芋は、サトイモの一種で、エビイモやヤツガシラと同じトオノイモ群。庄内平野を流れる川を境に、酒田側は紫茎、鶴岡側は青茎になり、昔はどこの家にもありました。男は収入源になるお米を作り、カラトリ芋は、代々女が作ってきました。でんぷん質が細かく、クリのような風味がするのが特徴だと言われています。

サトイモはダイコン、ネギ、セリ、ミツバ、フキなどとともに古くから日本に根付いてきた野菜です。大きく分けて、南方から伝わった2倍体と中国大陸から伝わった3倍体の2種類があります。現在日本で栽培されているほとんどは3倍体で、畑での栽培が主体となっています。
カラトリイモは古くからある2倍体の品種で、「たうのいも」とも呼ばれ、以前は水田で育てられていました。圃場整備の関係で田に水が入らなくなり、今は畑で栽培されていますが、ねっとりとした独特の風味は、やはり湛水でしか作れないのだそうです。

昭和25年、当時は家庭での自給用であったカラトリ芋を収入につなげていこうと生産部会が設立されました。25人の女性で始められた出荷の取り組みは、画期的なことであったそうです。ところが、母から娘へ受け継がれてきた部会も、時代とともにメンバーが減り、今では平均年齢70歳以上の女性8人のみ。

10月下旬、カラトリ芋の収穫期に入ると、庄内の軒先には、茎を乾燥させたズイキが並びます。茎をイモ棒とよばれるハンガーに掛け軒下で乾燥させると1年は保存できる加工食品として重宝されています。今では、年中加工食品が手に入る時代となり、この軒先の風景は姿を消しつつあります。

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山形の民家におけるズイキの加工風景<写真>

「カラトリ芋は時間かけて作っても1本100円。お金にはならない。作り続けてきた理由はおお金ではなく、この味を自分の代で絶やしたくなかったから。
と、生産者は語ります。

お金には替えられない価値―それは旅する種の物語。母からから娘へ、嫁入り道具として持たされた種。過去の記憶と未来への道しるべがつまった種の歌。軒先に並ぶズイキがやさしい風に包まれる東北の秋の情景に、娘に故郷の味を持たせた母の思いが重なり、どこかしんみりと癒される陸奥の旅になりました。

(まえだちさと)