第2回  始めるならどれ?~たねとりの難易度

ホウレンソウの花を見たことがありますか?かぼちゃやトマトの花はあると思いますが、ニンジンやキャベツ、小松菜は?もちろん、花は咲きます。さて、たねとりをするならば、どれから始めるのがいいでしょうか。たねとりの難易度は、交雑しやすさ、種が充実するまでの期間など、いろいろ考慮すべきポイントがあります。まずは、作物の一生のうち、どの段階で食べられているのか、成長ステージと収穫時期の関係についてみてみましょう。(写真はパセリの花)
 
◆◇作物の成長の段階◇◆
普段食べている野菜を成長ステージでみると、スプラウトは生まれたての赤ちゃん、葉物は少年期、ブロッコリーは蕾が咲きかけた花の20代、果実の中でもキュウリ、ピーマンは半熟の青年期、トマト、スイカは完熟の中年期(図1)。ふだん私たちは未熟なものを食べてます。人生を謳歌した完熟後に収穫される野菜って実は少ないんですね。
成長曲線
図1 野菜の成長ステージと収穫時期

完熟に近いステージで収穫される野菜ほど、普通栽培と採種栽培の方法はそれほど違いません。幼少期に収穫される葉菜類の種採りは、普通の栽培方法とはずいぶん変わってきます。あまり深く考えず、食べる用の収穫と同時に種も採りたい場合、トマト、スイカ、メロン、カボチャがおススメです。ウリ科(かぼちゃ、きゅうり)は交雑防止のため、袋掛けしたり、交配作業が必要ですが、収穫後に追熟させて、種をとりだせばよいので、普通の栽培方法に少し手間をかけるくらいです。
次は、交雑しやすさについてみてみましょう。
 
◆◇交雑しやすさ◇◆
種ができるには、雄しべの花粉が雌しべと受粉する必要がある、というのは生物で習いました。植物には、同じ花に雄しべも雌しべもあるもの(アブラナ科、ナス科、マメ科など)、雄花と雌花が別々に咲くもの(ウリ科、トウモロコシ)、雄株と雌株がわかれているもの(ホウレンソウ、アスパラ)があります。

同じ個体の雌しべと雄しべが「自家受粉」する植物と、他の個体と「他家受粉」する植物は、はっきりわかれるわけではなく、交雑の確率で表1のように分類されます。
交雑率
表1 作物の交雑率

交雑の可能性が高いものを同じ時期に2種類以上育てる場合、交雑防止策が必要になってきます。特に、アブラナ科は野生のアブラナ、菜の花とも交雑の可能性があるので要注意です。具体的な交雑防止対策は、作物によっていろんな方法があるので詳細は後日紹介したいと思います。
 
◆◇たねとり難易度◇◆

★    マメ科   インゲン、エンドウ、ソラマメ、ダイズ
★★   ナス科   トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ
★★★  ウリ科   キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン
★★★★ アブラナ科 大根、かぶ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリ
(船越建明「野菜の種はこうして採ろう」より引用)

成長ステージでいうところの熟した種を食べる豆は、交雑が少ない自家受粉作物でもあり、挑戦しやすいです。ナス科は、交雑率も低くて、成長ステージも完熟に近いので、はじめやすい。ただ、ナス科は果実から取り出すのにコツがいるし、発芽率も低くなりがちなので、個人的にはナス科よりもウリ科の方が楽だと思います。もちろん、ウリ科は交雑防止対策がいりますが・・・。

たねとりを始めるなら、交雑の可能性が低いものがおススメですが、多様な地元ならではの品種がたくさん残っているのは、やはり他家受粉の作物。アブラナ科やウリ科は地方によって多種多様な変わり種があります。地元ならではのカブやダイコンは実に味があり、育てがいがあるというもの。
成長ステージと交雑率による難易度は、あくまで参考です。この種を絶対残したい!と惚れ込んだ野菜があれば、その「愛」に勝る技術はないのですから―。
 
 
おススメ参考図書
船越建明「野菜の種はこうして採ろう」創森社、2008年
秀明自然農法ネットワーク「自家採種の手引き」2010年
ミシェル・ファントン、ジュード・ファントン「自家採種ハンドブック―たねとりくらぶを始めよう」現代書館、2002年
鏡山悦子「自然農・栽培の手引き」南方新社、2007年
タキイ種苗㈱出版部「都道府県別地方野菜大全」農文協、2002年
別冊現代農業「農家が教える品種とことん活用読本」農文協、2011年10月号
 

(まえだちさと)